コラム

タイランド4.0と東部経済回廊(EEC)

タイは今、高所得国入りを目指す長期開発ビジョン「タイランド4.0」を国家戦略として掲げています。その中心的なプロジェクトこそが、バンコク東部3県(チョンブリー県、チャチューンサオ県、ラヨーン県(図①))を対象とする東部経済回廊(EEC)開発です。この国家プロジェクトは、タイの未来を形作る一大事業であり、集中的な投資による競争力のある産業の育成と、地域のハブ機能の強化を二大目標としています。

EECはタイランド4.0の核となる10のターゲット産業(以下表①)の集積地へと進化させ。カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム市場へもアクセスしやすい地理的優位性から、ASEANのハブとしての成長を目指しております。

図①

(©2025 Google)

表①

次世代自動車スマート
エレクトロニクス
医療および健康ツーリズム農業および
バイオテクノロジー
未来食品
ロボット産業航空および
ロジスティックス
バイオ燃料 バイオ科学デジタル産業医療ハブ

◆東部経済回廊(EEC)開発について

EEC開発は、政府主導で進められるため、総額1兆5,000億バーツ(25年11月20日時点で約7兆2,800億円)を超える大規模なインフラ整備が中核を担います。特に、人流・物流を飛躍的に強化する以下の4つのプロジェクトが進行中です。

  1. ウタパオ国際空港拡張事業(開業予定2028年)

新たな滑走路と旅客ターミナルの建設により、年間6,000万人の旅客受け入れが可能になる。

  1. 高速鉄道事業(開業予定2029年)

バンコク近郊のドンムアン空港、スワンナプーム空港、そしてEEC内のウタパオ空港の3つの主要国際空港を高速鉄道で結ぶ。ウタパオ空港からバンコクまで約60分でアクセス可能となり、人流が格段に改善する。

  1. レムチャバン深海港第3期事業(開業予定2027年~2029年)

コンテナ、RORO船(貨物を積んだまま走行できる車両運搬船)ターミナルを増設し最大処理能力を年間1,800万TEU(20フィートコンテナ換算)、自動車積載能力を300万台まで拡張し、ASEAN最大の深海港としての地位を確立する。

  1. マプタプット工業港第3期事業(第1段階は2027年・第2段階は2031年に完工予定)

液化天然ガス(LNG)の処理能力を年間1,100万トンへ大幅に拡張し、バイオ燃料やバイオ化学といったエネルギー・化学産業の集積を増やす。

◆外国企業向けの特別な優遇政策

タイ政府は、民間企業を誘致するために過去最大の投資優遇策を提供しています:

  • 法人所得税の免除: 投資委員会(BOI)の最長8年間に加え、EECへの投資

(戦略プロジェクトなど)には最長15年間の免除が適用される可能性があります(投資内容によって異なる場合があります)。

  • 人材誘致: EECで働く外国人専門家に対し、個人所得税がタイの最高税率

35%から一律17%に軽減され、5年間有効の就労認可証が発給される計画です。

タイにおいても依然として様々な開発が行われています。これらは日系企業にとって、さらなるグローバル展開・成長の好機に成りうると考えております。みらいコンサルティンググループはタイ現地に法人を構え、常駐している日本人スタッフがタイ進出を図る日系企業の皆さまに寄り添ってご支援いたします。グローバル展開を検討されている経営者の皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。