~日系企業がシンガポールでビジネスを行う際に、労務上の主な留意点を全6回の連載にて解説いたします~
【第6回】
《解雇》
解雇はその原因によって、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇に区分される。当該解雇は以下表の解雇予告期間を踏まえた上で進める必要がある:
- 26週間未満の場合は解雇1日前
- 6週間以上2年未満の場合は解雇1週間前
- 6週間以上2年未満の場合は解雇1週間前 2年以上5年未満の場合は解雇2週間前
- 5年以上の場合は解雇4週間前
労働者の自己都合退職時の解雇予告期間も上記各項目と同じ期間である。しかし、当該期間に値する給与額を解雇の場合は労働者に支払えば、また労働者の自己都合退職の場合は雇用主に支払えば、即日解雇/退職することが可能である。それ以外で雇用主が即日解雇できるケースとしては次が挙げられる:
- 法により刑事責任を追及された場合 等
- 著しい職務怠慢、不正利得行為により会社に重大な損害を与えた場合
- 労働者が同時に他の使用者と労働関係を形成し、本会社の業務任務の完成に甚だしい影響を与えた場合、または、会社から指摘しても是正を拒否した場合
- 詐欺、脅迫の手段等により会社と労働契約を締結した場合(例:学歴または資格詐欺 等)
- 法により刑事責任を追及された場合 等
《労働紛争の解決手法》
労働紛争に発展する場合は主に以下の順にその解決が図られる:
- 直接または第三者(顧問弁護士等)を介して和解を図る(※1)
- 和解否決の場合、「紛争管理のための三者提携」(TADM(※2))に申し立てる→TADM調停
- TADM調停で和解否決の場合、「雇用訴訟裁判所(ECT)(※3)」に紛争事案を申請(※4)
- ECT職員がケースマネジメントカンファレンス(CMC)にて仲裁活動を行う
- CMC仲裁判断に対して不服を申し立てる場合、下級裁判所にて提訴 → 原則1審、2審、3審判決
※1 労働紛争法上、解決時は所定の同意書にて労使双方が署名する必要がある
※2 TADM(Tripartite Alliance for Dispute Management)とは労働省(MOM)・全国労働組合会議(NTUC)・シンガポール経営者連盟(SNEF)が合同で紛争事態に関して取り組む団体
※3 ECTとは「Employment Claims Tribunals」の略
※4当該申請には①TADM調停で和解できなかったことと②TADM職員承認のECT委任証明書が必要