日系企業がタイでビジネスを行う際の、労務上の主な留意点を全5回の連載にて解説いたします。
【第2回】
タイの雇用契約と試用期間について
◆雇用契約
労使が合意すれば雇用契約は成立し、労働契約書の作成は義務付けられていないが、トラブル回避のために雇用契約書を作成するのが一般的。
◆試用期間
試用期間は最大119日とするのが一般的(下記⑤解雇補償金との関係)試用期間中は、労働者の能力不足を理由とした解雇が可能試用期間中の解雇であっても事前の解雇通知が必要。
タイの賃金について
◆最低賃金
最低賃金制度には、地域別最低賃金と、技能別最低賃金がある。地域別最低賃金は、地域・県ごとに規定され、技能別最低賃金は、政府が実施する試験に合格して技能認定を受けた労働者に適用される最低賃金である。
給与支払いに関しては、以下のような諸原則がある。
賃金全額払いの原則
- 原則として使用者は、賃金・時間外労働手当・休日労働手当・休日時間外労働手当から、税金や社会保険料を控除する。
直接払いの原則
- 原則として労働者の勤務場所で支払わなければならない。銀行振込による場合は、予め書面により従業員の同意を取得しておく必要がある。
同一労働同一賃金の原則
- 業務の内容及び質が同一で、業務量も同一である場合には、性別にかかわらず同等の賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当を支払う必要がある。
月1回以上払いの原則
- 使用者は、最低でも月に1回以上、賃金を支払わなければならない。
タイ通貨払いの原則
労働者への賃金は、原則としてすべてタイ通貨によりよることが定められている。外貨で支払う場合にはあらかじめ労働者の同意が必要となる。
◆割増賃金
割増賃金の時間あたりの賃金の計算にあたっては、1ヵ月の労働日数を30日として計算する。例)月給18,000バーツ、1日あたりの労働時間8時間の場合
18,000÷(30日×8時間)=75バーツ
| 時間外労働 | 1.5倍 |
| 休日労働 | 1.0倍 (※労働日の時間当たりの賃金の1 倍以上の追加賃金を意味するため、100%賃金を追加となる) |
| 休日時間外労働 | 3.0倍 |
(※深夜労働に関する規定は無い)
◆解雇補償金
勤続120日以上の労働者を解雇する場合には、以下のとおり解雇補償金の支払いが必要である。
| 継続勤務期間 | 解雇補償金 |
| 120日以上1年未満 | 最終賃金の30日分以上 |
| 1年以上3年未満 | 最終賃金の90日分以上 |
| 3年以上6年未満 | 最終賃金の180日分以上 |
| 6年以上10年未満 | 最終賃金の240日分以上 |
| 10年以上20年未満 | 最終賃金の300日分以上 |
| 20年以上 | 最終賃金の400日以上 |
(※有期契約の期間満了による場合は解雇補償金の支払いは不要)
◆労働契約の終了
- 雇用契約で定めた期間が満了したときは、事前通告を行わずとも雇用契約は終了する。
- 雇用契約に期間の定めがない場合、使用者または労働者は一方に対して、賃金支払日またはそれ以前に、書面により、次の賃金支払日に雇用契約を終了すると通告することにより雇用契約を終了させることができる。但し、合理的な理由が必要となる。3ヵ月を超える以前の通告は不要。
- 使用者は、事前通告により雇用契約満了のときまで支払わなければならない額の賃金を支払うことにより、労働者を直ちに解雇することができる。